純利益12倍のマイクロン決算——顧客の前払い320億ドル、積み上がるメモリーの「予約」

半導体メモリー大手の米マイクロン・テクノロジーの2026年6〜8月期決算は、売上高が前年同期の約4.8倍、純利益が約12倍になった。顧客との長期契約は26件に増え、前払い金などは320億ドルに達した。メモリー需給の逼迫を受け、顧客が数年先の供給を確保する動きが広がっている。

THE AI TIMES JAPAN 2026.10.02 07:30 5 min read
純利益12倍のマイクロン決算——顧客の前払い320億ドル、積み上がるメモリーの「予約」

この記事のポイント

① 米マイクロン・テクノロジーの2026年6〜8月期決算は、売上高が前年同期比約4.8倍の542億ドル(約8兆6,000億円)、純利益が約12倍の377億ドル(約6兆円)だった。AI向けの需要でメモリーの需給が逼迫し、価格が高騰している

② 需給の逼迫を受け、数年先の供給を確保しようとする顧客の「予約」が積み上がっている。長期契約は26件に増え、顧客が払い込んだ前払い金などは320億ドルに達した。同社は2030年までの売上高の35%超が、すでにこうした契約で決まっていると見積もる

③ 同社はメモリーの需給が2028年にかけて「はるかに引き締まる」とみる。2026年8月期に274億ドルを投じた設備投資をさらに増やし、日本では広島の工場の増設に着工した

メモリー価格の上昇、純利益は12倍

米マイクロン・テクノロジーの2026年6〜8月期決算は、売上高が前年同期比約4.8倍の542億ドル(約8兆6,000億円)、純利益が約12倍の377億ドル(約6兆円)だった。売上高は6四半期連続で過去最高を更新した。

同期で締めた2026年8月期の通期も、売上高が前期比約3.6倍の1,332億ドル(約21兆円)、純利益が約10倍の850億ドル(約13兆円)といずれも過去最高となった。データセンター向けの2部門で売上高の6割強を占める。続く2026年9〜11月期も、売上高は前年同期の約4.5倍の615億ドル前後を見込む。サンジェイ・メロートラCEOは、2027年8月期について「さらに好調な業績になる」とコメントした。

増収増益の要因は、主に値上がりだ。AI向けの需要でメモリーの需給が逼迫し、価格が高騰している(関連記事:純利益46倍のキオクシア決算が映す「転換点」、AIは使われる段階へ)。6〜8月期のDRAMは、出荷量の伸びが前四半期比で数%にとどまる一方、売上高は27%増えた。売上総利益率は前年同期の44.7%から86.8%に上がった。

DRAMは、AIサーバーやパソコンが処理中のデータを一時的に置くメモリーだ。HBM(広帯域メモリー)はDRAMを積み重ねた製品で、AI半導体のすぐ隣でデータを高速に読み書きする。同じ量のシリコンから作れる容量は、HBMにすると通常のDRAMより大幅に少なくなる。

メーカーがAI向けのHBMに生産を振り向けるほど、同じ生産能力で作れるメモリーの総量は減る。需要が膨らむうえに供給も増えにくく、需給は逼迫しやすい。このため、メモリーの値上がりはパソコンやスマートフォン向けにも広がる。

顧客の「予約」が積み上がり、前払い金は320億ドルに

同社は決算と併せて、「予約」の積み上がりを示した。数年先までの供給量を取り決め、顧客が前払い金などを払い込む「戦略的顧客契約」は26件と、6月時点の16件から増えた。前払い金などは320億ドル(約5兆1,000億円)で、6月時点の見込み220億ドルから膨らんだ。契約に基づく受注残は約1,500億ドル(約24兆円)。

同社は、これらの契約が2030年までの売上高の35%超を占めると見積もる。好況と不況を繰り返してきたメモリー業界で、こうした契約は「業績の持続性への確信を高める」と説明する。

HBMについては、2027年に供給する分の大半を「前年比で大幅な値上げ」となる条件で契約済みだ。長期契約の多くは価格に上限と下限を設け、買い手は値上がりを、売り手は値下がりを抑える。

AI半導体大手のエヌビディアは8月の決算で、今後生産するAI半導体向けにメモリーなどの部材を2,790億ドル分予約したと明らかにした(関連記事:売上2.1倍で最高益のNVIDIA決算——巨大テックの外へ広がるAI半導体の買い手)。予約の動きはAI関連にとどまらない。マイクロンは7月、デンソーやアステモ、米クアルコムなど自動車分野の7社と長期の供給契約を結んだと公表した。

需給は2028年にかけて「はるかに引き締まる」

一方で、同社製品の値上がりの勢いは鈍っている。6〜8月期のDRAM価格は前四半期比で10%台後半、NANDは約30%上昇した。上昇率は3〜5月期の60%台前半、80%台半ばから縮小している。価格に上限を設けた契約が増えるほど、市場価格が上がっても契約分の売値は上限で止まる。値上がりの一部を手放す代わりに、同社は数年分の販売量と前払い金を確保する。マイクロンは、今後の値上がりが「より緩やか」になるとしつつ、需給は2027年8月期と2028年8月期に「はるかに引き締まる」とみる。

同社は2026年8月期に274億ドルを設備投資に充て、2027年8月期は上期だけで約250億ドルを投じ、下期はさらに増やす計画だ。日本では7月、広島県東広島市の工場で製造棟の増設に着工し、2028年後半に製造装置の搬入を始める。