
AIの「記憶」、2028年分まで受注——メモリー大手5社が示すエージェントAIの実需
2026.11.02AIの利用拡大で扱うデータが膨らみ、それを保持する半導体メモリーの需要が急増している。キオクシアなどメモリー大手5社は、数年先の生産分まで長期契約で販売先を固めつつある。需給の逼迫が続く中で販売単価が上がり、各社の業績は大きく伸びている。
この記事のポイント
① キオクシアは2027年の生産能力分の販売先がすべて決まり、28年も出荷量の5割超が長期契約で決まっている。メモリー大手5社は、最長で2031年まで続く長期契約を進めている
② 背景には、主にエージェントAIの利用拡大がある。自律的に仕事をこなすエージェントAIは、動けば動くほどデータを読み書きし、その置き場所となるメモリーを多く必要とする
③ 一方、供給はすぐには増えない。最先端品は製造の難度が高く、新工場の立ち上げにも時間がかかる。需給の逼迫で価格が上がり、5社とも業績が大きく伸びている
数年先まで、買い手が決まる
半導体メモリー大手のキオクシアホールディングスは、10月30日に発表した2026年7〜9月期決算で、27年の生産能力分は販売先がすべて決まった「SOLD OUT」の状態だと明らかにした。28年も、複数年の長期契約で、出荷量の5割超の販売先が決まっているという。
韓国SKハイニックスは28日、大手クラウド事業者を含む主要顧客14社と長期契約を結び、27年と28年の生産能力の5割超について販売先が決まったと発表した(関連記事:SKハイニックス、27〜28年の生産の半分超が契約済み——売上高4.3倍、営業利益率80%)。
米マイクロン・テクノロジーは、2031年まで続くものを含めて長期契約が26件に増え、30年までの売上の35%超を占める見込みだと説明した(関連記事:純利益12倍のマイクロン決算——顧客の前払い320億ドル、積み上がるメモリーの「予約」)。
キオクシアと合弁で工場を運営する米サンディスクは、顧客8社と長期契約を結び、27年6月期は出荷量の約半分、28年6月期は約3分の2の販売先が決まっているという。韓国サムスン電子は、長期契約で安定した販売の基盤を築く方針を示した。
需要を押し上げる、エージェントAI
各社の見通しに共通するのが、メモリー需要の強さだ。理由には、主にエージェントAIの利用拡大が挙がる。自律的に仕事をこなすエージェントAIは、動けば動くほどデータを読み書きし、その置き場所を多く必要とする。
サムスンは、個人向けのエージェントAIの広がりで、大容量メモリーの引き合いが急増すると見込む。キオクシアはAI関連の需要を「極めて旺盛」とし、KVキャッシュ向けが伸びていると説明する。
KVキャッシュは、AIの作業記憶にあたる。AIは言葉を一つ出力するたびに、それまでに入力された言葉と自ら出力した言葉を参照するため、エージェントAIのように長く複雑な仕事をこなすほどKVキャッシュは膨らむ。
増産を急ぐが、供給はすぐには増えない
一方、供給はすぐには増えない。最先端品は製造の難度が高く、新工場の立ち上げにも時間がかかる。SKハイニックスは、需要が供給を上回る状態が2030年まで続くとみる。マイクロンは、需給が27〜28年にかけて26年より「はるかに引き締まる」とし、いつ均衡に戻るかは「見通せない」と説明する。
各社は生産能力を増やす投資を進めている。SKハイニックスは韓国・清州の新工場「M15X」の立ち上げを急ぎ、26年末までにフル稼働させる計画だ。サムスンは26年に半導体部門で約76兆8,000億ウォン(約9兆900億円)を投じる計画で、新工場の建設などを進める。
国内の工場でも、増産に向けた投資が進む。キオクシアは四日市工場(三重県四日市市)と北上工場(岩手県北上市)の既存の建屋で生産を増やしつつ、北上で新たな製造棟の建設準備を始めた。稼働は29年度中の予定で、その後も市場の伸びに合わせて段階的に広げる。
マイクロンは広島県東広島市の工場で、生産能力を広げる工事に着工し、製造装置の搬入は28年後半に始まる予定だ。
単価が上がり、業績が伸びる
需給の逼迫で、メモリーの販売単価は上がっている。キオクシアの7〜9月期の販売単価は、ドル建てで4〜6月期から20%台半ば上がり、業績が会社の見通しを上回る主な理由になった。サムスンも、メモリーの市場価格がすべての用途で上がったとした。
キオクシアの7〜9月期の売上収益は前年同期比5.5倍の2兆4,800億円、営業利益は1兆9,947億円で、営業利益率は80%に達した。10〜12月期の売上収益は2兆5,000億円を見込み、4四半期連続で過去最高を更新する見通しだ。
SKハイニックスの7〜9月期の営業利益は前年同期比7.3倍の83兆3,338億ウォン(約9兆8,800億円)、営業利益率は80%で、いずれも四半期として過去最高だった。サムスンは、半導体部門が全社の営業利益の99%を占めた(関連記事:サムスン電子、営業利益12.7兆円の99%が半導体——メモリー不足、27年はさらに強まる見通し)。
マイクロンの6〜8月期の売上高は前年同期比4.8倍の542億2,900万ドル(約8兆5,100億円)で、9〜11月期は615億ドル前後(約9兆6,500億円)を見込む。サンディスクの7〜9月期の売上高は同4.8倍の110億3,100万ドル(約1兆7,400億円)で、10〜12月期は122億〜126億ドル(約1兆9,300億〜1兆9,900億円)と予想する。
メモリーを買う、巨大IT企業の投資
メモリーの需要の主な出どころは、データセンターに巨額を投じる米国のハイパースケーラーと呼ばれる巨大IT企業だ。その代表格であるマイクロソフト、アルファベット、アマゾン、メタの4社が26年7〜9月期に設備に投じた額は、合計約2,019億ドル(約31兆9,000億円)と前年同期比2.1倍に膨らんだ。
マイクロソフトは、メモリーやストレージの値上がりが、今後の設備投資を押し上げる要因の一つになるとみる。アマゾンも、メモリー半導体などの供給の不安定さを、業績に影響しうる要因に挙げている。
4社とも、高い水準の投資を続ける構えだ。メタは27年も積極的に投資する方針を示した。マイクロソフトは26年10〜12月期の設備投資を500億ドル(約7兆8,900億円)超と見込む。アルファベットは7〜9月期の設備投資を前年同期の2倍超に増やし、AIの基盤への需要が非常に大きいとした。アマゾンは、26年の設備投資を約2,200億ドル(約34兆7,000億円)とする計画を維持した。
https://www.theaitimesjapan.com/ai-memory-demand/